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『アメリカの大恐慌』を讀む(3)集團的過失といふ難問 The Problem: the Cluster of Error

集團的過失といふ難問 (The Problem: the Cluster of Error

景氣循環について、いくつかの「謎」がある。ロスバードによれば、これらの謎を解明できるかどうかが正しい理論の鍵となる。その第一は「集團的過失」(cluster of error)と呼ばれる現象だ。

企業家は將來の需要を豫測し、事業を行ふ。優れた企業家であるほど、どのやうな商品が消費者に好まれるかを的確に豫測し、それに基づき投資し、利益をあげる。豫測能力の乏しい者は損失を出し、事業を續けられなくなつて市場から去る。時間がたつにつれ、豫測能力の高い企業家が多く殘ることになる。損をする者も一部ゐるだらうが、多くは少なくともコストに見合ふ收入を確保し、利益を得ることができるはずだ。

しかし實際には、不況や恐慌になるとほとんどすべての企業家が突然損失を被る。一體なぜなのか。ロスバードは問ふ。「國中の拔け目ないビジネスマン連中がそのやうなミスを一齊に犯すとは、どういふことか。しかもあるタイミングで突然さうなるのは、なぜなのか」。

豫測の材料となるデータが突然變化したから、では答へにならない。突然の變化を含めて豫測することが企業家の仕事なのだから。

景氣循環にまつはるもう一つの「謎」は、業種によつて景氣の影響度が異なることだ。工場の建物、機械、装置、原材料といつた資本財(capital-goods)を製造する企業は、好況時は非常に儲かるが、不況になると大赤字に陷ることも珍しくない。これに對し、食品や醫藥品など消費者が直接消費する消費財(consumer-goods)を製造する企業は、景氣の良し惡しにかかはらず、あまり收益がぶれない。

この對照的な現象は、株式投資の經驗者にはなじみがあるだらう。株式市場で鐵鋼、非鐵、化學、機械といつた資本財メーカーは「景氣敏感株」と呼ばれ、好況・不況によつて業績が大きく變化し、それに伴つて株價も大幅に上下することで知られる。一方、食品、醫藥品などの消費財メーカーや小賣業は「ディフェンシヴ株」といふ。ディフェンシヴとは「守りに強い」といふ意味で、景氣が惡くなつても業績が比較的安定してをり、株價も大きく下げにくいことからかう呼ばれる。なぜこのやうな現象が起こるのか。

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