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『アメリカの大恐慌』を讀む(9)不況を防ぐ(採るべきだつた政策)

採るべきだつた政策

それでは大恐慌前夜の1920年代、アメリカ政府がとるべき適正な政策はどのやうなものだつたのだらう。

America's Great Depression

America's Great Depression

ロスバードの見解を箇條書きでまとめると次のやうになる。

  • 最善の策。聯邦準備制度を廢止。民間の發劵銀行に百パーセントの金準備を義務づける
  • 次善の策。聯邦準備制度を廢止。民間銀行に百パーセントの金準備を義務づけない代はりに、顧客の求めに應じて金を渡せなかつた場合、ただちに倒産させる
  • 聯邦準備制度を廢止できなかつた場合。政府の監視により、いかなる信用膨脹も許さないやうにする

三番目について補足しよう。すでに述べたやうに、政府は本質的に貨幣膨脹を望む組織だから、監視役としてははなはだ心許ない。だがその氣になれば、貨幣膨脹を止める絶大な力を發揮することができる。前囘觸れたやうに、民間銀行は法的に貸出餘力があるにもかかはらず、あへて貸出を増やさない場合もあるから、マネーの量を膨脹させる中央銀行の能力は完璧ではない。だが一方、マネーの量を收縮させる中央銀行の力は絶對的だ。なぜなら自らの意思によつて預金準備の額や率を引き下げ、民間銀行の貸出餘力を小さくできるからだ。言ひ換へれば、貸出餘力が大きくなつた場合、それを使ふかどうかは民間銀行の意思次第だが、貸出餘力が小さくなつた場合、民間銀行は否應なしに貸出を減らさなければならない。

中央銀行の支配が直接及ばない金融機關もある。大恐慌前夜のアメリカで言へば、聯邦準備制度に加盟してゐない貯蓄銀行、貯蓄貸附組合、生命保險會社などだ。しかし聯銀の支配下にあり、融資規模も大きい商業銀行の貸出を減らせば、これらの金融機關の貸出増は相殺できる。

ロスバードはここまでの論考を次のやうに政府に對する嚴しい批判で締めくくつてゐる。

聯邦準備制度と國全體の貨幣に及ぼすその絶對的力を考へると、聯邦政府は(聯銀が設立された)1913年以降のいかなる信用膨脹についても完全な責任があると言はねばならない。民間銀行は獨力で信用膨脹を起こすことはできない。すべて聯邦政府と聯邦準備制度の支持と默認があつたからこそだ。民間銀行は1913年以來、事實上、政府の人質だつたのだ。信用膨脹とそれが招いた不況にまつはるいかなる罪も、聯邦政府が負ふべきであり、それ以外の何者にも轉嫁すべきでない。

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