社會・政治
たいていの經濟學者は、警察、司法、國防を民間では供給できない特殊なサービスとして、政府による獨占を認める。だがそれは間違つてゐる。社會の治安を守るこれらのサービスは、きはめて重要だからこそ、非效率な政府に任せず、自由な競爭がある民間で供給…
陰謀論は、たいていの言論人やメディアにすこぶる評判が惡い。多くの場合、「陰謀論にすぎない」と嘲笑され、それで議論を打ち切られてしまふ。しかしさうした態度は間違つてゐる。陰謀論を妄想の産物だとして頭から否定してかかる言論人は、一見「リアリス…
豆腐と角砂糖は、どちらも白くて四角で、食べられる。しかしだからと言つて、豆腐と角砂糖が同じものだとは子供でも言はない。表面上似てゐても、本質はまつたく異なるからである。ところが經産官僚の中野剛志は、最近出版した『官僚の反逆』(幻冬舎新書)…
市場經濟は「弱肉強食」だとよく批判される。だがこれほど歴史的な事實に反する誤解はない。西洋法制史を專門とする山内進が著した『文明は暴力を超えられるか』(筑摩書房)を讀めば、それがよくわかる。 市場經濟以前の中世歐州社會は、どのやうなものだつ…
衆議院が解散し、欝陶しい政治の季節が始まつた。衆院選についてメディアや言論人は相變はらず、政治を再生する一歩にせよとか、民主主義の原點に立ち返れとか、紋切型の言辭を竝べてゐる。今なすべきは、政治や民主主義そのものを疑ふことなのに、誰もそれ…
音樂といへばクラシックとJポップくらゐしか聽かないダサい男なので、クラブ・ミュージックの智識はないし、クラブに行つたこともない。だから日本でクラブが存續の危機に瀕してゐることなど、うかつにも知らなかつた。磯部涼編著『踊ってはいけない国、日本…
米國大統領選で、民主黨のバラク・オバマが共和黨のミット・ロムニーを破り、再選された。各種メディアは、「大きな政府」を是とするオバマが「小さな政府」を指向するとされるロムニーを破つたことで、米國や世界にどのやうな影響を及ぼすかあれこれ豫想す…
國際政治學者の中西輝政は『迫りくる日中冷戦の時代』(PHP新書)で、シナ(中西自身は「中国」といふ語を使用してゐるが、「シナ」ないし「支那」が適切であり、これらは差別用語ではない。詳しくは呉智英のこの文章を參照)は日本に對してさまざまな經濟的…
今の世の中で、資本主義と言へば、「暴走」するものと相場が決まつてゐる。元外交官で評論家の佐藤優は『人間の叡智』(文春新書)で、この手垢のついた主張をまたぞろ繰り返す。現代の資本主義の「暴走」を防げるのは國家しかないから、國家の強化が必要だ…
社會學者の小熊英二は『社会を変えるには』(講談社現代新書)で、戰後續いてきた「独占企業・行政・政治の複合体」(440頁)の問題點が福島原發事故によつて明らかになつたと正しく指摘する。ならば日本社會にとつて、この複合體の解體こそ急務のはずである…
藤井聡・中野剛志『日本破滅論』(文春新書)で對談者の二人は、公共事業に消極的な主流派經濟學を罵倒し、日本を破滅させないためには、大規模な公共事業を斷行せよと主張する。もちろん、自分たちの主張こそ亡國に導くものだとは、まつたく氣づいてゐない。…