2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

金錢蔑視といふ僞善の告發――ジョージ秋山『銭ゲバ』

少年時代、極貧のため母に死なれた蒲郡風太郎(がまごほり・ふうたらう)は金錢に強い執着を抱く。長ずるにつれ手段を選ばぬやり口で巨額の富を蓄へ、金の力で政界進出まで果たすが、悲劇的な最期を迎へる。ジョージ秋山のマンガ『銭ゲバ』(幻冬舎文庫、全2…

チャルマーズ・ジョンソン死去

チャルマーズ・ジョンソン死去。『通産省と日本の奇跡』は感心しないが、リバタリアンが戰爭と平和を考へる際の必讀書をいくつか著してゐる。アメリカ帝国への報復作者: チャルマーズジョンソン,Chalmers Johnson,鈴木主税出版社/メーカー: 集英社発売日: 20…

社會主義はなぜ不可能か――『まんがで読破 共産党宣言』と『ヒューマン・アクション』 Why Is Socialism Impossible?

ここ二三年、文學や哲學の古典をマンガ化した文庫本のシリーズが相次いで出版されてゐる。よいことだ。原著の内容をすべてマンガで、それもわづかな頁數で再現するのは無理だらうが、マンガ家が勝れた手腕の持ち主なら、原著のエッセンスを傳へることはでき…

課税は盜みである――「税金鳥」と『自由の倫理学』 Taxation Is Robbery

前囘の記事で紹介した『ドラえもん』第9卷にはもう一つ、政治經濟の本質を衝いた話が載つてゐる。「税金鳥」(ぜいきんとり)だ。藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 9クチコミを見る小遣ひをたんまり貰へるスネ夫が羨ましいのび太、「不公平だ!!」と憤り、ド…

「機會の平等」のウソ――「ハリスン・バージロン」と「ビョードーばくだん」 The Fallacy of 'Equal Opportunity'

ソ聯が崩潰し、社會主義の限界が明らかになつて以來、「結果の平等」を理想として掲げる智識人はさすがにほとんどいなくなつた(まだ一部にゐるやうだが)。だがそれに代はつて「機會の平等」の徹底を求める聲が強まつてゐる。たとへば、經濟的に豐かな家庭…