2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『原発のウソ』

小出裕章『原発のウソ』(扶桑社新書、2011年)福島原發事故の發生以來、「原發事故が起こつたのは市場原理主義のせゐ」といふ非難をウェブで時々目にする。「それは間違ひだ」と市場原理主義者である私が言つても信じてもらへないだらうから、次の文章を讀…

『古典で読み解く現代経済』

池田信夫『古典で読み解く現代経済』(PHPビジネス新書、2011年)著者池田氏は「日本で自由主義を根づかせる努力が必要」(p.135)と述べ、自由主義的經濟學者であるハイエクやフリードマンを好意的に取り上げてはゐる。しかしそれだけに、自由主義とは對極…

『図説 ハプスブルク帝国』

加藤雅彦『図説 ハプスブルク帝国』(河出書房新社、1995年)民族自決、國民國家、民主主義。これらはそれほどすばらしいものなのか。ハプスブルク帝國の歴史を知るにつれ、疑問がつのる。ハンガリー生まれの歴史家、フランソワ・フェイトはかう主張してゐる…

『競争の作法』

齊藤誠『競争の作法――いかに働き、投資するか』(ちくま新書、2010年)デフレ脅威論をデータで反駁する第1章は、おもしろい。2002年から2009年まで消費者物價指數はほぼ横ばいだつた。2009年は前年比1.4%低下で、1971年以降最大の下げ幅を記録したと騒がれ…

『大災害から復活する日本』

副島隆彦『大災害から復活する日本』(徳間書店、2011年)副島氏の本は何册も讀んでゐるので、たいていのことには驚かない。福島第一原發事故について「もうどの原子炉も爆発することはない。安心してください」(p.14)などと斷言してゐるのはさすがにどう…

『「通貨」を知れば世界が読める』

浜矩子『「通貨」を知れば世界が読める――"1ドル50円時代"は何をもたらすのか?』(PHPビジネス新書、2011年)世界的な金融危機をきつかけに、通貨への關心が高まつてゐる。21世紀の通貨制度はどうあるべきか。著者浜氏は本書で「通貨体制の三元構図」(p.…

『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』

荒木飛呂彦『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』(集英社新書、2011年)人氣マンガ家である著者の本だから、お氣に入りの作品をただ羅列し、紹介する駄本であつても、賣れたことだらう。しかし本書はそのやうないい加減な本ではない。借り物でない、自前の見…

『経済学革命』

木下栄蔵・三橋貴明『経済学革命――復興債28兆円で日本は大復活!』(彩図社、2011年)著者の一人である三橋氏はケインズ經濟學のデタラメを戲畫的に體現するネットのカリスマとして知られるが、相方の木下氏はそれをしのぐスケールのでかい人物だ。工學博士…

『アナーキズム』

忙しさにかまけて三カ月以上も放置してしまつた。なかなか時間が取れないので、まとまりのない讀書メモのやうなものを少しづつ書くことにしたい。浅羽通明『アナーキズム――名著でたどる日本思想入門』(ちくま新書、2004年)情報量豐かな本だが、アナキズム…