2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

平和の敵は政府

『静かなる大恐慌』(集英社新書)で著者の柴山桂太(滋賀大准教授)は、經濟の自由化・グローバル化は世界を繁榮と平和に導くとは限らず、むしろ國家の對立を高めてしまふ傾向があると主張する。だが柴山は非難する對象を間違へてゐる。國際的な對立を高め…

「經濟對策」が招く危機

日米歐の積み上がつた國家債務に警告を發するジョン・モールディン、ジョナサン・テッパー共著『エンドゲーム』(山形浩生譯、プレジデント社)の「訳者あとがき」で、山形は異例にも、自分が飜譯した同書の主張に眞つ向から異を唱へる。しかしその批判はケ…

「資本主義の暴走」のウソ

今の世の中で、資本主義と言へば、「暴走」するものと相場が決まつてゐる。元外交官で評論家の佐藤優は『人間の叡智』(文春新書)で、この手垢のついた主張をまたぞろ繰り返す。現代の資本主義の「暴走」を防げるのは國家しかないから、國家の強化が必要だ…

金本位制といふ選擇

米大統領選を前に、共和黨が金本位制への復歸を檢討する委員會の設置を政策綱領に盛り込み、注目されてゐる。金本位制復活に對する經濟專門家やメディアの評價は大半が否定的で、「トンデモ本の世界では人気あるトピック」とこき下ろす向きもある。 しかし金…

いつか來た「第三の道」

社會學者の小熊英二は『社会を変えるには』(講談社現代新書)で、戰後續いてきた「独占企業・行政・政治の複合体」(440頁)の問題點が福島原發事故によつて明らかになつたと正しく指摘する。ならば日本社會にとつて、この複合體の解體こそ急務のはずである…