2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧
文章を書くのが好きな人なら、きつと自分の考へ方や書き方に影響を及ぼした著作家があることだらう。私の場合、日本人に限れば少なくとも三人の名を舉げることができる。ベストセラーを連發する作家やジャーナリストに比べれば知名度こそ劣るが、その文章は…
『自由貿易の罠』(青土社、2009年)の著者、中野剛志は經濟産業省職員だが、政府による貿易の制限、すなはち保護主義の強化を主張した同書の「あとがき」でかう強調してゐる。 筆者は、自分が大学教授であろうと、新聞記者であろうと、あるいはダンサーであ…
外國による侵掠を恐れない人はゐない。侵掠された國民の運命は悲慘だ。生命を奪はれ、財産を奪はれ、勞働を強制される。つまり暴力によつて自由を奪はれる。そのやうな悲慘な運命をたどりたくないから、たいていの國は軍隊を持ち、外敵の侵掠に備へる。日本…
長い歴史を持ち、誰もがそれを當然と思つてゐる制度を疑ふことは難しい。今の日本人からすると、江戸時代の御先祖樣が嚴しい身分制度の下に生きてゐたことなどほとんど信じられないし、逆に江戸の人々が我々を見たら、民主主義などといふ仕組みで政治指導者…
世間の大半の人は、自由主義と民主主義は似たやうなものだと思つてゐる。だが兩者は全く別物だ。それどころか正反對の理念ですらある。自由主義*1は政府が個人の自由を束縛することに反對する。したがつて政府の權限を可能な限り小さくすることを要求し、最…
クイズ。1929年に起きた世界恐慌の原因は次のどれ? ものすごいインフレが起こった ニューヨークである日突然株が大暴落した 金本位制に復帰した 勝間和代・宮崎哲弥・飯田泰之『日本経済復活 一番かんたんな方法』(光文社新書、2010年、168-169頁)による…
反市場の風潮と鬪ふべくこのブログを始めたわけだが、早くも最強の敵が現れた。なにしろ相手は人間ではない。山だ。いや、相撲取りではない。本物の山だ。日本中の山が私のやうな市場原理主義者を目の敵にして鬪ひを挑んでゐるらしいのだ。 いくら騎士を名乘…
主流派經濟學者らによると、我々が生きてゐるこの世界に、恐ろしい地獄が時折出現する。しかもここ日本ではその地獄がまさに出現しつつあるといふ。その地獄とはデフレ地獄。人々がお金ばかり欲しがつてモノを欲しがらなくなり、モノの値段が全體的に下がり…
民主黨の藤田幸久國際局長(參議院議員)が2001年9月11日の米同時多發テロについてテロリストの犯行かどうかに疑問を挾んだとして、米紙ワシントン・ポストが社説で同議員を酷評した。異樣だ。實に異樣だ。藤田議員の發言内容ではない。ワシントン・ポストが…
このブログでは市場經濟に對する政府の介入を徹底的に批判してゆく方針だが、批判の對象となる「政府の介入」には當然、政府・中央銀行による金融政策を含む。金融政策とは貨幣に對する政府の恣意的介入にほかならないからだ。政府が田舎にダムや道路を造る…
日本經濟が立ち直るにはまづデフレ(物價の持續的な下落)を止めなければいけない。そのためには日銀がとにかくお札を刷りまくり、世の中にお金を大量に供給すればよい。だがいまいましいことに、無智な素人や藝能人は「インフレが怖い」などと口走る。評論…
デフレ(物價の持續的下落)はなぜ惡いのか。經濟評論家、勝間和代によれば「デフレは百害あつて一利なし」。まるで發ガン物質みたいな言はれやうだが、實際、勝間氏は著書『自分をデフレ化しない方法』(文春新書、2010年)でデフレをずばり次のやうに呼ん…
前囘の記事「ベーシックインカムのユートピア」で小飼弾さんを批判したところ、偶然にもその直後、小飼氏が自身のブログでベーシックインカムをあらためて推奬した。しかも財源として、私が同じ記事で批判した飯田泰之さんのインフレ構想を「コロンブスの金…
ベーシックインカムとは、政府がすべての國民に對し最低限の生活に必要な現金を無條件で支給する制度。從來の社會保障制度と異なり、世帶でなく個人に對して支拂はれることや、所得水準にかかはらず支拂はれることなどが特徴だ。金持ちも支給を受けることに…
さて本論を始める前に一言説明しておきたい。さう、私のこの文章の書き方のことである。ええと、「旧字旧かな」ていうんだっけ、これ? なんでわざわざこんな古臭い書き方すんの? こいつは戦前生まれのジジイか? それとも小難しい字を使ってインテリぶって…
市場原理主義、新自由主義、自由放任主義、野放し資本主義――。今、日本中で、いや世界中で、市場經濟や經濟的自由を非難する聲が勢ひを増してゐる。格差擴大も、金融危機も、地球温暖化も、人心の荒廢も、スノボー選手の服裝が個性的すぎるのも、すべてアメ…