2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

呉智英氏の思ひ出(4)投稿

呉智英氏が月刊誌「噂の眞相」にエッセイ「折々のバカ」を一年にわたり連載し始めたのは1986年秋、私は卒業を控へた大學四年生になつてゐた。同年12月號に載つた第三囘は、渡辺和博著『金魂巻』に對する上野昂志氏の論評を俎上に載せ、上野氏及び岡庭昇氏ら…

呉智英氏の思ひ出(3)講演

『封建主義、その論理と情熱』を讀んで數ケ月後、大學の學園祭に呉氏が講演者として招かれることを知り、その偶然に驚いた。呉氏の話を直接聽けるのは非常に嬉しく、ぜひ行かうと思つたが、一つだけ困ることがあつた。當時テレビの深夜番組「オールナイトフ…

呉智英氏の思ひ出(2)熱中

『封建主義…』の後、『インテリ大戰爭』や『大衆食堂の人々』なども讀むうち、すつかりファンになつてしまつた。呉氏の思想が徐々に理解できるやうになつたこともあるが、同じくらゐ魅力に感じたのは文章である。主張は明確、表現は明晰で紛れがない。「逃げ…

呉智英氏の思ひ出(1)邂逅

本日から掲載する「呉智英氏の思ひ出」は、十一年前に公開した文章の再掲です。 ☆九州から上京し、大學に通ひ始めて間もないころだつた。國分寺驛前の本屋で何か面白さうな本はないかと物色してゐると、題字の背景が赤で、虎と竹林と黒い兜の武士(恐らく加…

巨大地震と經濟 五つの謬論(1)震災は經濟にプラス

約一週間前の三月十一日、東日本を襲つたマグニチュード九・〇の巨大地震は津波、火災、さらには福島原發での爆發事故などを引き起こし、今なお被害は擴大してゐる。ここでは犠牲者への哀悼の意や、現場で救援・復舊等に携はる人々への感謝をくだくだしく書…

巨大地震と經濟 五つの謬論(2)復興税を導入せよ

震災の復興資金をまかなふ方法として、政治家や專門家から大きく二つの選擇肢が提案されてゐる。一つは増税だ。自民黨の谷垣禎一總裁は「東北復興ニューディール政策」を行ふべきだと述べ、財源確保のため増税を提案した。しかし經濟的な效率の面で、税は寄…

巨大地震と經濟 五つの謬論(3)復興國債を發行せよ

復興資金をまかなふもう一つの選擇肢として取りざたされてゐるのは、國債だ。エコノミストの高橋洋一氏は、十兆圓程度必要といふ復興資金の財源として、増税案を批判し、それに代へて「復興國債」の發行を提唱してゐる。それも日銀による直接引受がよいとい…

巨大地震と經濟 五つの謬論(4)便乘値上げを許すな

地震發生後、ある會社社長の「行状」が話題になつた。人々が生活必需品を爭ふやうに買ひ求めるのに目をつけ、値上げで儲けた話をウェブで紹介し、高くても賣れる時は値上げするべきだなどと書いたところ、轟々たる非難を浴びたのだ。だが不足してゐる物資や…

巨大地震と經濟 五つの謬論(5)消費しまくれ

被災で多くの人々が命を落としたり、不便な避難生活を強ひられたりしてゐることが傳はるにつれ、震災を免れた者が消費を樂しむのは申し譯ない、不謹愼だと言ひ出す人がゐて、それに對し「消費を控へると經濟活動が停滯し、被災地にも惡い影響を及ぼす。むし…

「フラット課税で税収アップ」を嬉しがる人たち

「金融日記」の藤沢数希氏が「所得税はフラット10%にして大幅な税収アップ」といふ文章を「アゴラ」に寄せてゐる。フラット課税とは所得の多い少ないにかかはらず、同じ税率を適用する制度だ。現在、日本では所得が多くなるほど税率も高くなる累進課税を採…

【寄稿】金本位制と自由銀行業の役割について

市場経済(資本主義経済)はその本質において、決して弱肉強食的ではない。逆に互恵的であり、友愛や同情、人々の間の連帯感を育てる土壌であることを私は既に述べた。今回は市場経済が正常に発展するには、金本位制と自由銀行業の機能の復活がその必要条件…

『アイアムアヒーロー』と市民の武裝權

鈴木英雄、三十五歳。マンガ家として短期間ながら雜誌に連載を持つたこともあつたが、その後鳴かず飛ばずでアシスタントとして糊口をしのぐ。焦りと不安を感じながらも決まりきつた日常に流される日々だ。そんなある日、人々を原因不明の怖ろしい災厄が襲ひ…