2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『アメリカの大恐慌』を讀む(12)流動性の罠

流動性の罠(The liquidity "trap")ケインズ派は、「流動性選好」(liquidy preference)、つまり貨幣への需要が非常に大きくなることにより、利子率がそれ以上下がらない状態があると主張する。かうなると金融政策では投資を十分に刺戟できず、經濟を不況…

『アメリカの大恐慌』を讀む(11)ケインズ派による批判

ケインズ派による批判(Keynesian Criticism of the Theory)オーストリア學派の景氣循環理論に對するケインズ派からの批判は大きく(1)流動性の罠(2)賃金の下方硬直性――の二つの論點からなされる。いづれもオーストリア學派が前提とする市場の自律調整機能が…

市場の驚異を語れ

第一次世界大戰で若くして命を落とした兵士の一人に、アメリカの詩人、ジョイス・キルマーがゐる。もつともよく知られるのは「木」("Trees")といふ短い作品だ。 思ふに、木ほど美しい詩に めぐりあふことは決してあるまい 大地のゆたかな乳房に 餓ゑた口を…

『アメリカの大恐慌』を讀む(10)景氣循環理論への批判と反論

景氣循環理論への批判と反論(Problems in the Austrian Theory of the Trade Cycle)これまで説明したオーストリア學派の景氣循環理論には、異論も唱へられてゐる。この項では主な批判に對し、ロスバードが反論を述べる。America's Great Depression作者: M…

無縁社会は惡くない――島田裕巳『人はひとりで死ぬ』

地域や家族の人間關係が稀薄になり、孤獨死が増える「無縁社會」が社會問題として取りざたされてゐる。菅直人總理は對策を檢討するため、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠内閣府參與ら有識者による特命チームを設置するやう指示したといふ。しかし無縁社…

『アメリカの大恐慌』を讀む(9)不況を防ぐ(採るべきだつた政策)

採るべきだつた政策それでは大恐慌前夜の1920年代、アメリカ政府がとるべき適正な政策はどのやうなものだつたのだらう。America's Great Depression作者: Murray N. Rothbard出版社/メーカー: www.bnpublishing.com発売日: 2008/12/30メディア: ペーパーバッ…

『アメリカの大恐慌』を讀む(8)不況を防ぐ(部分準備銀行制度は詐欺)

部分準備銀行制度は詐欺さて、マネー膨脹について考へる際、政府・中央銀行だけでなく、銀行の役割を頭に入れておく必要がある。マネーの中で政府・中央銀行が發行する現金は一部にすぎず、多くは銀行の貸出が占めるからだ。America's Great Depression作者:…

『アメリカの大恐慌』を讀む(7)不況を防ぐ(政府とマネー膨張)

不況を防ぐ (Preventing Depressions)この項「不況を防ぐ」は長くなるため三囘に分け、それぞれ原著にはない見出しを立てる。政府とマネー膨脹前項でロスバードは不況から早く立ち直るための方策を論じたが、そもそも不況が最初から起こらなければ、その方が…

余は如何にして自由主義者となりしか

(明けましておめでたうございます。以下は2008年1月3日に「地獄の箴言」で書いた文章の再掲です)こんな小さな發表の場しかない無名人のくせに、まるで大思想家のやうな大袈裟な信條告白を以下記したいと思ふ。正月休みで暇を持て餘していらつしやる方のみ…