マンガ

「平たい顔族」の企業家精神

ヤマザキマリのマンガ『テルマエ・ロマエ』(ビームコミックス)がヒットしてゐる。今日(4月28日)から阿部寛主演の實冩映畫が全國で公開され、原作の人氣もさらに高まりさうだ。「ローマの浴場」といふ意味の題名が示すやうに、テーマは風呂。古代ローマの…

TPPは自由貿易か

小林よしのり『ゴーマニズム宣言スペシャル 反TPP論』(幻冬舎、二〇一二年)を讀んだ。經濟學的には滅茶苦茶な内容である。企業の内部留保が成長維持に缺かせない投資に使はれることを理解せず「全く一般労働者に還元されていない」(15頁)などと日本共産…

『新ナニワ金融道』と惡法の問ひ

『ナニワ金融道』のマンガ家、青木雄二が死去して今年で九年になる。青木が副業のエッセイなどでマルクスや共産主義を持ち上げるのには辟易したが、本業の『ナニワ金融道』はそんな政治的イデオロギーを感じさせず、貸金業の裏面を生々しく描いて文句なしに…

闇金融は惡くない

真鍋昌平のマンガ『闇金ウシジマくん』の最新刊、第23卷(小学館、2011年)で中心人物となる高田は、丑嶋社長率ゐる闇金融業「カウカウファイナンス」に勤める前、ホストクラブでホストとして働いてゐた。ホストをやめたきつかけは、客の一人だつた未成年の…

差別ですが、それが何か?

はるな檸檬のマンガ『ZUCCAxZUCA(ヅッカヅカ)』(講談社)の第2卷が出た。熱狂的な寶塚歌劇團ファン、いはゆる「ヅカヲタ」たちのしあはせな日常を描いて爆笑を誘ふこと、他の追隨を許さない。いや、追隨も何も、寶塚ファンのことばかり描いたマンガなど、…

『アイアムアヒーロー』と市民の武裝權

鈴木英雄、三十五歳。マンガ家として短期間ながら雜誌に連載を持つたこともあつたが、その後鳴かず飛ばずでアシスタントとして糊口をしのぐ。焦りと不安を感じながらも決まりきつた日常に流される日々だ。そんなある日、人々を原因不明の怖ろしい災厄が襲ひ…

遠くにありて

「西崎くん。17歳の時つきあってた子って、だれ?」 「……クラブのマネージャーやってた子」 「好きだった?」 「そりゃあ、その時はね」 「もどりたいわね、17歳の時に」 「そうかな、おれは今でいいや。人生やり直すのめんどくさい」 (私は、もどりたい。…

金錢蔑視といふ僞善の告發――ジョージ秋山『銭ゲバ』

少年時代、極貧のため母に死なれた蒲郡風太郎(がまごほり・ふうたらう)は金錢に強い執着を抱く。長ずるにつれ手段を選ばぬやり口で巨額の富を蓄へ、金の力で政界進出まで果たすが、悲劇的な最期を迎へる。ジョージ秋山のマンガ『銭ゲバ』(幻冬舎文庫、全2…

社會主義はなぜ不可能か――『まんがで読破 共産党宣言』と『ヒューマン・アクション』 Why Is Socialism Impossible?

ここ二三年、文學や哲學の古典をマンガ化した文庫本のシリーズが相次いで出版されてゐる。よいことだ。原著の内容をすべてマンガで、それもわづかな頁數で再現するのは無理だらうが、マンガ家が勝れた手腕の持ち主なら、原著のエッセンスを傳へることはでき…

課税は盜みである――「税金鳥」と『自由の倫理学』 Taxation Is Robbery

前囘の記事で紹介した『ドラえもん』第9卷にはもう一つ、政治經濟の本質を衝いた話が載つてゐる。「税金鳥」(ぜいきんとり)だ。藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん 9クチコミを見る小遣ひをたんまり貰へるスネ夫が羨ましいのび太、「不公平だ!!」と憤り、ド…

「機會の平等」のウソ――「ハリスン・バージロン」と「ビョードーばくだん」 The Fallacy of 'Equal Opportunity'

ソ聯が崩潰し、社會主義の限界が明らかになつて以來、「結果の平等」を理想として掲げる智識人はさすがにほとんどいなくなつた(まだ一部にゐるやうだが)。だがそれに代はつて「機會の平等」の徹底を求める聲が強まつてゐる。たとへば、經濟的に豐かな家庭…