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陰謀論を笑ふ愚

陰謀論は、たいていの言論人やメディアにすこぶる評判が惡い。多くの場合、「陰謀論にすぎない」と嘲笑され、それで議論を打ち切られてしまふ。しかしさうした態度は間違つてゐる。陰謀論を妄想の産物だとして頭から否定してかかる言論人は、一見「リアリス…

市場經濟への濡衣

市場經濟はしばしば、經濟・社會問題の元兇として責められる。しかしそれはたいていの場合、根據のない濡衣(ぬれぎぬ)である。眞犯人は、これもたいていの場合、政府である。 經濟評論家の三橋貴明は、著書『2013年 大転換する世界 逆襲する日本』(徳間書…

自由で人は孤立しない

自由は個人を孤立させ、社會の絆を分斷するといふ、よくある主張は誤りである。自由が擴大しても、進んで選んだ場合は別として、他者との關係が稀薄になることはない。それどころか、自由な社會でこそ、人はさまざまな他者と知り合ひ、影響し合ひ、助け合ふ…

マクドナルドは官僚制?!

豆腐と角砂糖は、どちらも白くて四角で、食べられる。しかしだからと言つて、豆腐と角砂糖が同じものだとは子供でも言はない。表面上似てゐても、本質はまつたく異なるからである。ところが經産官僚の中野剛志は、最近出版した『官僚の反逆』(幻冬舎新書)…

市場は弱肉強食か

市場經濟は「弱肉強食」だとよく批判される。だがこれほど歴史的な事實に反する誤解はない。西洋法制史を專門とする山内進が著した『文明は暴力を超えられるか』(筑摩書房)を讀めば、それがよくわかる。 市場經濟以前の中世歐州社會は、どのやうなものだつ…

民主主義を疑へ

衆議院が解散し、欝陶しい政治の季節が始まつた。衆院選についてメディアや言論人は相變はらず、政治を再生する一歩にせよとか、民主主義の原點に立ち返れとか、紋切型の言辭を竝べてゐる。今なすべきは、政治や民主主義そのものを疑ふことなのに、誰もそれ…

クラブ擁護の理念

音樂といへばクラシックとJポップくらゐしか聽かないダサい男なので、クラブ・ミュージックの智識はないし、クラブに行つたこともない。だから日本でクラブが存續の危機に瀕してゐることなど、うかつにも知らなかつた。磯部涼編著『踊ってはいけない国、日本…

見失はれた爭點

米國大統領選で、民主黨のバラク・オバマが共和黨のミット・ロムニーを破り、再選された。各種メディアは、「大きな政府」を是とするオバマが「小さな政府」を指向するとされるロムニーを破つたことで、米國や世界にどのやうな影響を及ぼすかあれこれ豫想す…

ふしぎな「資本主義の精神」

今年ベストセラーとなつた橋爪大三郎・大澤真幸『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書)は、誤りが非常に多いとしてキリスト教徒からツイッターで批判されてゐたやうだが、その内容がふツー連編『ふしぎな「ふしぎなキリスト教」』(ジャーラム出版)とい…

政府が起こした大恐慌

今月は大恐慌が始まつた月である。今から八十三年前、1929年10月24日の「暗黒の木曜日」のニューヨーク株暴落をきつかけに、米國で長期にわたる深刻な不況が起こり、世界に廣がつた。現在の一般的見方では、大恐慌は自由放任的な資本主義が招いた「市場の失…

ノーベル經濟學賞の虚像

ノーベル經濟學賞は言ふまでもなく、經濟學で最も權威ある賞の一つとされる。物理學賞、化學賞とともにスウェーデン王立科學アカデミーによつて銓衡され、正式名稱に經濟學(Economics)でなく「經濟科學」(Economic Sciences)といふ語を用ゐるなど、經濟…

戰爭は國家の健康

公開中のフィンランド獨豪合作映畫『アイアン・スカイ』(ティモ・ヴオレンソラ監督)は、月に潛んでゐたナチスドイツの殘黨が地球に襲來するといふ奇想天外な物語である。この映畫のすばらしさは、單純にナチスを惡玉、米國を中心とする地球側の諸國家を善…

謀略なんか怖くない

國際政治學者の中西輝政は『迫りくる日中冷戦の時代』(PHP新書)で、シナ(中西自身は「中国」といふ語を使用してゐるが、「シナ」ないし「支那」が適切であり、これらは差別用語ではない。詳しくは呉智英のこの文章を參照)は日本に對してさまざまな經濟的…

平和の敵は政府

『静かなる大恐慌』(集英社新書)で著者の柴山桂太(滋賀大准教授)は、經濟の自由化・グローバル化は世界を繁榮と平和に導くとは限らず、むしろ國家の對立を高めてしまふ傾向があると主張する。だが柴山は非難する對象を間違へてゐる。國際的な對立を高め…

「經濟對策」が招く危機

日米歐の積み上がつた國家債務に警告を發するジョン・モールディン、ジョナサン・テッパー共著『エンドゲーム』(山形浩生譯、プレジデント社)の「訳者あとがき」で、山形は異例にも、自分が飜譯した同書の主張に眞つ向から異を唱へる。しかしその批判はケ…

「資本主義の暴走」のウソ

今の世の中で、資本主義と言へば、「暴走」するものと相場が決まつてゐる。元外交官で評論家の佐藤優は『人間の叡智』(文春新書)で、この手垢のついた主張をまたぞろ繰り返す。現代の資本主義の「暴走」を防げるのは國家しかないから、國家の強化が必要だ…

金本位制といふ選擇

米大統領選を前に、共和黨が金本位制への復歸を檢討する委員會の設置を政策綱領に盛り込み、注目されてゐる。金本位制復活に對する經濟專門家やメディアの評價は大半が否定的で、「トンデモ本の世界では人気あるトピック」とこき下ろす向きもある。 しかし金…

いつか來た「第三の道」

社會學者の小熊英二は『社会を変えるには』(講談社現代新書)で、戰後續いてきた「独占企業・行政・政治の複合体」(440頁)の問題點が福島原發事故によつて明らかになつたと正しく指摘する。ならば日本社會にとつて、この複合體の解體こそ急務のはずである…

亡國の經濟學

藤井聡・中野剛志『日本破滅論』(文春新書)で對談者の二人は、公共事業に消極的な主流派經濟學を罵倒し、日本を破滅させないためには、大規模な公共事業を斷行せよと主張する。もちろん、自分たちの主張こそ亡國に導くものだとは、まつたく氣づいてゐない。…

「デフレは惡」の呪縛

若田部昌澄・栗原裕一郎『本当の経済の話をしよう』(ちくま新書)は、すばらしい部分と惜しまれる部分が混在してゐる。經濟學者で先生役の若田部は、評論家で生徒役の栗原に、多彩なエピソードを交へて經濟學の基本をわかりやすく講義する。すばらしいのは…

良い金持ち・惡い金持ち

「金持ちになるには二つの方法がある。富を創出する方法と、他人の富を奪う方法だ」。ノーベル賞受賞經濟學者で、すでに多くの著作が邦譯されてゐるジョセフ・スティグリッツは、最新刊『世界の99%を貧困にする経済』(楡井浩一・峯村利哉譯、徳間書店)の初…

中央銀行はいらない

今の日本で「日銀を廢止せよ」などと言へば、頭のをかしい奴としか思はれまい。しかし米國には、中央銀行廢止論を三十年以上も大まじめに主張しつづけてゐる國會議員がゐる。大統領選にも何度か出馬した、聯邦下院議員のロン・ポール(テキサス州選出、共和…

さつさと政府を退場させろ

ポール・クルーグマンの最新刊『さっさと不況を終わらせろ』(山形浩生譯、早川書房)が出た。クルーグマンと言へば、現代經濟學を支配するカルト宗教、ケインズ教の最も有名かつ熱心な傳道師である。もちろん本の中身は、政府といふ神の「御業」が十分にお…

ゴネ地主を擁護する

あるきつかけで、公開中の映畫『グラッフリーター刀牙(とき)』(藤原健一監督)を都内で觀て來た。正直あまり期待してゐなかつたのだが、これが面白かつた。馬鹿馬鹿しさに徹したところがよい。そしてもうひとつ、市場經濟の本質とは何かを考へるヒントに…

ハイエク對フリードマン

フリードリヒ・ハイエク(1899-1992)とミルトン・フリードマン(1912-2006)はしばしば、「新自由主義」の經濟學者としてひとくくりにされる。たしかに經濟にたいする政府の干渉を批判する點で二人は共通してゐる。しかしぜひ知つておかなければならないの…

フリードマンを超えろ

二十世紀を代表する經濟學者の一人、ミルトン・フリードマンの『選択の自由』(西山千明譯、日本経済新聞出版社)が新裝版で再登場した。しばらく品切れになつてゐたので、復刊で手に入れやすくなつたのは喜ばしい。ただしこの本は注意して讀まなければなら…

2012年上期人氣記事ベストテン

2012年上半期(1-6月)によくアクセスされた記事ベストテンです。お讀みいただきどうもありがたうございました。 リフレ主義は國家主義――中野剛志『レジーム・チェンジ』 『新ナニワ金融道』と惡法の問ひ ハイパーインフレはあり得ないか――『日本が破綻しな…

死刑免除は遺言で決めよ

刑事法學の大御所で、元東大教授の團藤重光(だんどう・しげみつ)が先週九十八歳で死去した。最高裁判事も務めた團藤は、死刑制度廢止を強く主張したことで知られる。しかし死刑を廢止するにせよ、維持するにせよ、政府が畫一的に決めれば、反對意見を持つ…

勝者と敗者は助け合ふ

資本主義經濟には競爭の勝者と敗者がつきものである。政治家や智識人の多くは敗者に同情を示し、政治の力で格差を是正せよと主張する。しかしそのやうな一見善意あふれるおこなひは、決して敗者自身のためにならないし、むしろ敗者を不幸にするだらう。 その…

ケインズ教のマインドコントロール

特別手配されてゐた元信者が相次いで逮捕されたオウム真理教は、かつて一部の智識人から好意的に評價され、それが教團の宣傳に利用された。今ではさすがにオウムの教義が肯定的に紹介されることはない。ところが經濟學の世界では、人々に害惡を及ぼす狂つた…

市場よ、センターを取れ

アイドル集團、AKB48の次のシングル曲を歌ふメンバーをファン投票で決める「選抜総選挙」を、今囘初めてテレビでしつかり觀た。一人一票でなく、CDを買つた枚數だけ投票權が附いてくる仕組みは、一部の識者にすこぶる評判が惡いやうだ。朝日新聞夕刊のコラム…

課税・國債・輪轉機

政府がお金を手に入れる方法は三つしかない。取るか、借りるか、作るかである。具體的にいへば、それぞれ(1)課税(2)國債の發行(3)お金の創造――といふことになる。なほ、(3)のお金とは、具體的には紙幣(お札)や銀行預金で、それらを作り出すのは形式的には…

自由は弱者にやさしい

自由主義は「強者の論理」だと思つてゐる人が多い。私も自由主義について詳しく知る前はさう考へてゐて、芥川龍之介の「自由は山嶺の空氣に似てゐる。どちらも弱い者にはたへることはできない」といふ言葉を格好よいなどと思つてゐた。 しかし實際は違ふ。む…

道徳を權力で強ひますか

マイケル・サンデル『それをお金で買いますか』(鬼澤忍譯、早川書房)が發賣された。序章が先行出版された際に一度批判したが、今囘全體を讀んでみたら、さらにお粗末だつた。サンデルは、自分がふさはしいと思はない領域で、人々が自由にふるまふことが感…

クイズでわかる立憲主義

自民黨が四月に發表した憲法改正案は、ひどい内容だ。とりわけひどいのは、すでにウェブ上で指摘されてゐるやうに、立憲主義を否定してゐることである。しかし立憲主義と言はれても、普通の人はピンとこないだらう。下手をすると、「飛鳥時代には聖徳太子が…

平等主義を蹴つ飛ばせ

サッカーアニメ『イナズマイレブン』シリーズが面白い。テレビ東京系列で2008年から2011年まで正篇『イナズマイレブン』が放送され、その後始まつた續篇『イナズマイレブンGO』が現在も續いてゐる。正篇はリアルアイムでは觀たことがなかつたのだが、家族(…

「平たい顔族」の企業家精神

ヤマザキマリのマンガ『テルマエ・ロマエ』(ビームコミックス)がヒットしてゐる。今日(4月28日)から阿部寛主演の實冩映畫が全國で公開され、原作の人氣もさらに高まりさうだ。「ローマの浴場」といふ意味の題名が示すやうに、テーマは風呂。古代ローマの…

「騙されるな!」に騙されるな

高橋洋一の新刊『「借金1000兆円」に騙されるな!――暴落しない国債、不要な増税』(小学館101新書、2012年)で有益なのは、デフレや國債にまつはる謬論を批判する最初の部分だ。たとへば藻谷浩介のこととみられるが、人口減少がデフレの原因だとする主張に對…

リフレ主義は國家主義――中野剛志『レジーム・チェンジ』

デフレ(物價の下落)は不況や失業を招く惡であるから、政府の政策を動員して「適正な」インフレ(物價の上昇)に引き戻さなければならない。かうした考へをリフレ主義と呼ぶ。これまでリフレ主義の誤りとそれが經濟・社會に及ぼす害惡についてはたびたび批…

【飜譯】徴兵制は奴隷制(D・ウェブスター)

筆者:ダニエル・ウェブスター(十九世紀アメリカの政治家) 原題:Daniel Webster, Daniel Webster on the Draft: Text of a Speech delivered in Congress, December 9, 1814 出所:The Online Library of Liberty これ〔徴兵制〕は自由な政體の性質と矛盾…

TPPは自由貿易か

小林よしのり『ゴーマニズム宣言スペシャル 反TPP論』(幻冬舎、二〇一二年)を讀んだ。經濟學的には滅茶苦茶な内容である。企業の内部留保が成長維持に缺かせない投資に使はれることを理解せず「全く一般労働者に還元されていない」(15頁)などと日本共産…

【飜譯】金と經濟的自由(グリーンスパン)

筆者:アラン・グリーンスパン (一九六六年、ニュースレター「客觀主義者(Objectivist)」掲載。アイン・ランド『資本主義――知られざる理念』〔未邦譯〕に再録。飜譯元の文章はウェブサイト321goldより) 金本位制に對するほとんどヒステリーじみた敵意は…

社會主義者ケインズ

ケインズの主著『一般理論』が山形浩生の新譯(正式な邦題は『雇用、利子、お金の一般理論』)で講談社学術文庫に入つた。すでに電子版もインターネットで公開されてゐるが、同時に手頃な紙の本として讀めるやうになつたのは、世界が財政金融危機に襲はれて…

不徹底な自由の擁護――池田信夫・藤沢数希の原發本

福島原發事故一年を前に、池田信夫、藤沢数希といふ二人の著名ブロガーが相次いで原子力發電に關する本を上梓した。いづれも基本的には原發を含む電力の自由化を唱へてをり、その限りにおいて評價できる。しかし仔細にみると、肝腎な部分で政府の關與を許容…

【飜譯】通貨安はユーロ圈を救ふか(ショスタク)

筆者:フランク・ショスタク (2012年2月9日、ミーゼス研究所デイリー・コラムより〔原文はこちら〕) ニューヨーク大學の經濟學教授、ヌリエル・ルービニは2012年1月25日、スイスのダヴォスで發言し、〔金融・財政の〕緊縮政策はユーロ圈の景氣後退を惡化さ…

『新ナニワ金融道』と惡法の問ひ

『ナニワ金融道』のマンガ家、青木雄二が死去して今年で九年になる。青木が副業のエッセイなどでマルクスや共産主義を持ち上げるのには辟易したが、本業の『ナニワ金融道』はそんな政治的イデオロギーを感じさせず、貸金業の裏面を生々しく描いて文句なしに…

私作る人、僕奪ふ人(F・オッペンハイマー)

人間が生きるために必要な富を手に入れ、欲望を滿足させるには、根本的に對立する二つの手段がある。それは勞働と掠奪である。つまり自分で骨を折つて働くか、それとも他人が働いて得た成果を力づくで奪ひ取るかだ。掠奪とか力づくで奪ひ取るとかいふと、犯…

相場觀と正義感の物語――『世紀の空売り』

マイケル・ルイスの新刊『ブーメラン』がベストセラーになつてゐる。それに刺戟されてか、二年前に出た前著『世紀の空売り』(東江一紀譯、文藝春秋)がまた賣れ始めてゐるやうだ。『ブーメラン』も面白さうなのでいづれ讀んで感想を書きたいが、この機會に…

【飜譯】リバタリアンの戰爭理論(ロスバード)

マレー・ロスバード (2011年5月16日、ミーゼス研究所デイリー・コラムより。The Myth of National Defense 〔『國防の神話』、2003年、未邦譯〕より拔粹) リバタリアン運動は、現代の主要な問題に立ち向かふうへで「戰略的知性」を利用できてゐないと、ウ…

『刑事コロンボ』はなぜ(リバタリアンにも)面白いか

主演のピーター・フォークが昨年死去したのをきつかけに、テレビドラマ『刑事コロンボ』の「舊シリーズ」全四十五話をレンタルDVDで半年ほどかけて觀た。子供の頃NHKでよく觀たが、すべて觀たのはこれが初めてだ。話によつて多少の出來不出來はあるものの、…