越後和典

社會主義者ケインズ

ケインズの主著『一般理論』が山形浩生の新譯(正式な邦題は『雇用、利子、お金の一般理論』)で講談社学術文庫に入つた。すでに電子版もインターネットで公開されてゐるが、同時に手頃な紙の本として讀めるやうになつたのは、世界が財政金融危機に襲はれて…

『新オーストリア学派とその論敵』

ホメロスの敍事詩『オデュッセイア』は英語でOdyssey(オデッセイ)だが、小文字のodysseyになると「長い放浪」「遍歴」といふ意味の普通名詞として使はれる。日本の經濟學者で、越後和典氏ほどこの言葉に似つかはしい知的人生を送つてきた人はゐないだらう。…

【寄稿】金本位制と自由銀行業の役割について

市場経済(資本主義経済)はその本質において、決して弱肉強食的ではない。逆に互恵的であり、友愛や同情、人々の間の連帯感を育てる土壌であることを私は既に述べた。今回は市場経済が正常に発展するには、金本位制と自由銀行業の機能の復活がその必要条件…

【寄稿】タイガーマスクの伊達直人的行為の拡大について

プロレス漫画タイガーマスクの主人公伊達直人を名乗る人物が昨年のクリスマスに前橋市の児童相談所にランドセル10個を寄付したことがメディアによって全国へ伝えられた。これを契機に、全国の自動養護施設等で生活している恵まれない子供への匿名の人物から…

【寄稿】地方分権(decentralization)を越えて無政府主義(anarchism)の実現へ

近年地方分権についての議論が花盛りである。民主党の某幹部の説明では地方分権とは中央政府の保持する権力を地方自治体(地方政府)へ委譲することをいうらしい。しかし既に述べたように権力(right)の唯一の保持者は個人であるから、この委譲とは権力では…

【寄稿】人間の権利(Man's Right)について

私はこれから木村貴さんの全面的な助力を得て、リバタリアンの立場から、拙文を時々発表させて頂く予定だが、今回は人間の権利とは何かというトピックスを取上げる。問題のポイントは、人間の権利は福祉優先主義(福祉国家の理念)と両立するか否かというこ…

私が愛する三人の過激思想家

文章を書くのが好きな人なら、きつと自分の考へ方や書き方に影響を及ぼした著作家があることだらう。私の場合、日本人に限れば少なくとも三人の名を舉げることができる。ベストセラーを連發する作家やジャーナリストに比べれば知名度こそ劣るが、その文章は…