2012-01-01から1年間の記事一覧

市場よ、センターを取れ

アイドル集團、AKB48の次のシングル曲を歌ふメンバーをファン投票で決める「選抜総選挙」を、今囘初めてテレビでしつかり觀た。一人一票でなく、CDを買つた枚數だけ投票權が附いてくる仕組みは、一部の識者にすこぶる評判が惡いやうだ。朝日新聞夕刊のコラム…

課税・國債・輪轉機

政府がお金を手に入れる方法は三つしかない。取るか、借りるか、作るかである。具體的にいへば、それぞれ(1)課税(2)國債の發行(3)お金の創造――といふことになる。なほ、(3)のお金とは、具體的には紙幣(お札)や銀行預金で、それらを作り出すのは形式的には…

自由は弱者にやさしい

自由主義は「強者の論理」だと思つてゐる人が多い。私も自由主義について詳しく知る前はさう考へてゐて、芥川龍之介の「自由は山嶺の空氣に似てゐる。どちらも弱い者にはたへることはできない」といふ言葉を格好よいなどと思つてゐた。 しかし實際は違ふ。む…

道徳を權力で強ひますか

マイケル・サンデル『それをお金で買いますか』(鬼澤忍譯、早川書房)が發賣された。序章が先行出版された際に一度批判したが、今囘全體を讀んでみたら、さらにお粗末だつた。サンデルは、自分がふさはしいと思はない領域で、人々が自由にふるまふことが感…

クイズでわかる立憲主義

自民黨が四月に發表した憲法改正案は、ひどい内容だ。とりわけひどいのは、すでにウェブ上で指摘されてゐるやうに、立憲主義を否定してゐることである。しかし立憲主義と言はれても、普通の人はピンとこないだらう。下手をすると、「飛鳥時代には聖徳太子が…

平等主義を蹴つ飛ばせ

サッカーアニメ『イナズマイレブン』シリーズが面白い。テレビ東京系列で2008年から2011年まで正篇『イナズマイレブン』が放送され、その後始まつた續篇『イナズマイレブンGO』が現在も續いてゐる。正篇はリアルアイムでは觀たことがなかつたのだが、家族(…

「平たい顔族」の企業家精神

ヤマザキマリのマンガ『テルマエ・ロマエ』(ビームコミックス)がヒットしてゐる。今日(4月28日)から阿部寛主演の實冩映畫が全國で公開され、原作の人氣もさらに高まりさうだ。「ローマの浴場」といふ意味の題名が示すやうに、テーマは風呂。古代ローマの…

「騙されるな!」に騙されるな

高橋洋一の新刊『「借金1000兆円」に騙されるな!――暴落しない国債、不要な増税』(小学館101新書、2012年)で有益なのは、デフレや國債にまつはる謬論を批判する最初の部分だ。たとへば藻谷浩介のこととみられるが、人口減少がデフレの原因だとする主張に對…

リフレ主義は國家主義――中野剛志『レジーム・チェンジ』

デフレ(物價の下落)は不況や失業を招く惡であるから、政府の政策を動員して「適正な」インフレ(物價の上昇)に引き戻さなければならない。かうした考へをリフレ主義と呼ぶ。これまでリフレ主義の誤りとそれが經濟・社會に及ぼす害惡についてはたびたび批…

【飜譯】徴兵制は奴隷制(D・ウェブスター)

筆者:ダニエル・ウェブスター(十九世紀アメリカの政治家) 原題:Daniel Webster, Daniel Webster on the Draft: Text of a Speech delivered in Congress, December 9, 1814 出所:The Online Library of Liberty これ〔徴兵制〕は自由な政體の性質と矛盾…

TPPは自由貿易か

小林よしのり『ゴーマニズム宣言スペシャル 反TPP論』(幻冬舎、二〇一二年)を讀んだ。經濟學的には滅茶苦茶な内容である。企業の内部留保が成長維持に缺かせない投資に使はれることを理解せず「全く一般労働者に還元されていない」(15頁)などと日本共産…

【飜譯】金と經濟的自由(グリーンスパン)

筆者:アラン・グリーンスパン (一九六六年、ニュースレター「客觀主義者(Objectivist)」掲載。アイン・ランド『資本主義――知られざる理念』〔未邦譯〕に再録。飜譯元の文章はウェブサイト321goldより) 金本位制に對するほとんどヒステリーじみた敵意は…

社會主義者ケインズ

ケインズの主著『一般理論』が山形浩生の新譯(正式な邦題は『雇用、利子、お金の一般理論』)で講談社学術文庫に入つた。すでに電子版もインターネットで公開されてゐるが、同時に手頃な紙の本として讀めるやうになつたのは、世界が財政金融危機に襲はれて…

不徹底な自由の擁護――池田信夫・藤沢数希の原發本

福島原發事故一年を前に、池田信夫、藤沢数希といふ二人の著名ブロガーが相次いで原子力發電に關する本を上梓した。いづれも基本的には原發を含む電力の自由化を唱へてをり、その限りにおいて評價できる。しかし仔細にみると、肝腎な部分で政府の關與を許容…

【飜譯】通貨安はユーロ圈を救ふか(ショスタク)

筆者:フランク・ショスタク (2012年2月9日、ミーゼス研究所デイリー・コラムより〔原文はこちら〕) ニューヨーク大學の經濟學教授、ヌリエル・ルービニは2012年1月25日、スイスのダヴォスで發言し、〔金融・財政の〕緊縮政策はユーロ圈の景氣後退を惡化さ…

『新ナニワ金融道』と惡法の問ひ

『ナニワ金融道』のマンガ家、青木雄二が死去して今年で九年になる。青木が副業のエッセイなどでマルクスや共産主義を持ち上げるのには辟易したが、本業の『ナニワ金融道』はそんな政治的イデオロギーを感じさせず、貸金業の裏面を生々しく描いて文句なしに…

私作る人、僕奪ふ人(F・オッペンハイマー)

人間が生きるために必要な富を手に入れ、欲望を滿足させるには、根本的に對立する二つの手段がある。それは勞働と掠奪である。つまり自分で骨を折つて働くか、それとも他人が働いて得た成果を力づくで奪ひ取るかだ。掠奪とか力づくで奪ひ取るとかいふと、犯…

相場觀と正義感の物語――『世紀の空売り』

マイケル・ルイスの新刊『ブーメラン』がベストセラーになつてゐる。それに刺戟されてか、二年前に出た前著『世紀の空売り』(東江一紀譯、文藝春秋)がまた賣れ始めてゐるやうだ。『ブーメラン』も面白さうなのでいづれ讀んで感想を書きたいが、この機會に…

【飜譯】リバタリアンの戰爭理論(ロスバード)

マレー・ロスバード (2011年5月16日、ミーゼス研究所デイリー・コラムより。The Myth of National Defense 〔『國防の神話』、2003年、未邦譯〕より拔粹) リバタリアン運動は、現代の主要な問題に立ち向かふうへで「戰略的知性」を利用できてゐないと、ウ…

『刑事コロンボ』はなぜ(リバタリアンにも)面白いか

主演のピーター・フォークが昨年死去したのをきつかけに、テレビドラマ『刑事コロンボ』の「舊シリーズ」全四十五話をレンタルDVDで半年ほどかけて觀た。子供の頃NHKでよく觀たが、すべて觀たのはこれが初めてだ。話によつて多少の出來不出來はあるものの、…

【飜譯】ハリー・トルーマンと原爆(ライコ)

ラルフ・ライコ (2010年11月24日) Harry Truman and the Atomic Bomb - Ralph Raico - Mises Dailyハリー・トルーマンの米大統領任期中もつとも鮮烈な出來事は、決して忘れられることはないだらうし、トルーマンの名と永遠に切り離せないだらう。すなはち…

經濟學に數學はいらない

「文系人間」の私は大學受驗を最後に、數學とほとんど縁のない生活を送つてゐるが、數學とは不思議で美しいものだといふ氣持ちはある。たとへばオイラーの等式だ。一見何の關係もなささうにみえる圓周率、對數、虚數がじつは相互につながつてをり、その關係…

『資本論』は砂上の樓閣

「日経BPクラシックス」から、マルクス『資本論』が中山元氏の新譯で刊行され始めた。賣り物のひとつとなつてゐるのは、これまで「剰余価値」と譯されてゐた語を「増殖価値」と改めたことだ。「訳者あとがき」によると、「Mehrwert の Mehr は、たんなる剰余…

【飜譯】米聯銀はどのやうに第一次大戰の戰費調達を助けたか(コーニング)

ジョン・ポール・コーニング (2009年11月19日) How the Fed Helped Pay for World War I - John Paul Koning - Mises Daily 政府が買物の支拂ひをする方法は三通りある。課税、借金、インフレーション(貨幣量の膨脹)だ。國民がふつう意識するのは最初の…

2011年人氣記事ベストテン

2011年によくアクセスされた記事ベストテンです。お讀みいただきどうもありがたうございました。 ハイパーインフレはあり得ないか――『日本が破綻しない10の根拠』を斬る(3) 自分の人生を生きよ(ジョブズ) 「政府の資産」は誰の資産か――『日本が破綻しない1…

「『小さな政府』を語ろう」で記事公開

古典的自由主義者が集ふ共同ブログ「『小さな政府』を語ろう」で、記事「『資本論』は砂上の樓閣」を公開しました。今囘からこの共同ブログに參加しました。ぜひご覽ください。

FMFJで記事公開

Free Market Forum Japan に飜譯「米聯銀はどのやうに第一次大戰の戰費調達を助けたか」を掲載しました。FMFJはリバタリアン有志で共同運營するサイトです。まだ始まつたばかりですが、興味のある方はぜひご覽ください。

貿易協定はいらない

あけましておめでたうございます。今年もラディカルに頑張る所存です。どうぞよろしく。 昨年11月、政府が環太平洋經濟連携協定(TPP)交渉參加を表明し、同協定への關心があらためて高まつてゐる。本屋の經濟書コーナーをのぞくと、一年近く前に刊行された…