2011-01-01から1年間の記事一覧

『経済学革命』

木下栄蔵・三橋貴明『経済学革命――復興債28兆円で日本は大復活!』(彩図社、2011年)著者の一人である三橋氏はケインズ經濟學のデタラメを戲畫的に體現するネットのカリスマとして知られるが、相方の木下氏はそれをしのぐスケールのでかい人物だ。工學博士…

『アナーキズム』

忙しさにかまけて三カ月以上も放置してしまつた。なかなか時間が取れないので、まとまりのない讀書メモのやうなものを少しづつ書くことにしたい。浅羽通明『アナーキズム――名著でたどる日本思想入門』(ちくま新書、2004年)情報量豐かな本だが、アナキズム…

呉智英知事の失敗

名古屋に住んでゐた四年前に書いた文章の再掲です。河村たかし旋風で全國的に注目された今年の統一地方選の話ではありませんので、ご注意を。 ☆愛知縣民以外は誰も知らないと思ふが、来月、愛知縣知事選がある。地元の新聞各紙は關聨記事を連日掲載してゐる…

呉智英氏の思ひ出(8)手紙

スイスに來て二年目、すなはち1999年の新春である。仕事や生活がやうやく落着いたのを機に、勇を鼓し、私は呉氏に初めて手紙を書いた。宛先は、呉氏の著作を多く出してゐる双葉社編輯部氣附である。永年の愛讀者であること、「噂の眞相」への投稿を著作で紹…

呉智英氏の思ひ出(7)疑義

1998年頃だつたと思ふ。呉氏は、保守派論客によるシンポジウム(「新しい教科書をつくる会」關係だつたかもしれぬ)にゲストとして招かれた席上、「私は天皇制廢止論者である」と發言し、物議を釀した。激しい左翼批判で知られた呉氏の「反天皇發言」は、言…

呉智英氏の思ひ出(6)豫兆

これまで鏤々述べたやうに、私は呉智英氏の永年の讀者である。ひところは、單行本のみならず、呉氏の文章が載つてゐさうな雜誌を書店で片端から物色したものである。現在は廢刊となつたNHK出版の月刊雜誌「Be-Common」を都内の書店でふと立ち讀みしたら、…

呉智英氏の思ひ出(5)反論

岡庭昇氏は私と保坂氏との投稿に對し、次號3月号の投書欄で早速反論してきた。「汚れ切つた政治的動物どもに」といふ凄まじい題名である。私にたいする批判の部分を引用する。 木村貴氏への質問。あなたは呉智英先生の文章を読んでいないと公言しているが、…

備蓄できない電力だからこそ、市場經濟に任せよう

電力流通關係の勤務經驗をもつ岸田信勝氏が「備蓄できない電力を市場経済に任せてよいのだろうか?」といふ記事を「アゴラ」に寄稿してゐる。技術的智識のない私にとつて勉強になる點はあるけれど、タイトルに集約された全體の趣旨には賛成できない。岸田氏…

呉智英氏の思ひ出(4)投稿

呉智英氏が月刊誌「噂の眞相」にエッセイ「折々のバカ」を一年にわたり連載し始めたのは1986年秋、私は卒業を控へた大學四年生になつてゐた。同年12月號に載つた第三囘は、渡辺和博著『金魂巻』に對する上野昂志氏の論評を俎上に載せ、上野氏及び岡庭昇氏ら…

呉智英氏の思ひ出(3)講演

『封建主義、その論理と情熱』を讀んで數ケ月後、大學の學園祭に呉氏が講演者として招かれることを知り、その偶然に驚いた。呉氏の話を直接聽けるのは非常に嬉しく、ぜひ行かうと思つたが、一つだけ困ることがあつた。當時テレビの深夜番組「オールナイトフ…

呉智英氏の思ひ出(2)熱中

『封建主義…』の後、『インテリ大戰爭』や『大衆食堂の人々』なども讀むうち、すつかりファンになつてしまつた。呉氏の思想が徐々に理解できるやうになつたこともあるが、同じくらゐ魅力に感じたのは文章である。主張は明確、表現は明晰で紛れがない。「逃げ…

呉智英氏の思ひ出(1)邂逅

本日から掲載する「呉智英氏の思ひ出」は、十一年前に公開した文章の再掲です。 ☆九州から上京し、大學に通ひ始めて間もないころだつた。國分寺驛前の本屋で何か面白さうな本はないかと物色してゐると、題字の背景が赤で、虎と竹林と黒い兜の武士(恐らく加…

巨大地震と經濟 五つの謬論(1)震災は經濟にプラス

約一週間前の三月十一日、東日本を襲つたマグニチュード九・〇の巨大地震は津波、火災、さらには福島原發での爆發事故などを引き起こし、今なお被害は擴大してゐる。ここでは犠牲者への哀悼の意や、現場で救援・復舊等に携はる人々への感謝をくだくだしく書…

巨大地震と經濟 五つの謬論(2)復興税を導入せよ

震災の復興資金をまかなふ方法として、政治家や專門家から大きく二つの選擇肢が提案されてゐる。一つは増税だ。自民黨の谷垣禎一總裁は「東北復興ニューディール政策」を行ふべきだと述べ、財源確保のため増税を提案した。しかし經濟的な效率の面で、税は寄…

巨大地震と經濟 五つの謬論(3)復興國債を發行せよ

復興資金をまかなふもう一つの選擇肢として取りざたされてゐるのは、國債だ。エコノミストの高橋洋一氏は、十兆圓程度必要といふ復興資金の財源として、増税案を批判し、それに代へて「復興國債」の發行を提唱してゐる。それも日銀による直接引受がよいとい…

巨大地震と經濟 五つの謬論(4)便乘値上げを許すな

地震發生後、ある會社社長の「行状」が話題になつた。人々が生活必需品を爭ふやうに買ひ求めるのに目をつけ、値上げで儲けた話をウェブで紹介し、高くても賣れる時は値上げするべきだなどと書いたところ、轟々たる非難を浴びたのだ。だが不足してゐる物資や…

巨大地震と經濟 五つの謬論(5)消費しまくれ

被災で多くの人々が命を落としたり、不便な避難生活を強ひられたりしてゐることが傳はるにつれ、震災を免れた者が消費を樂しむのは申し譯ない、不謹愼だと言ひ出す人がゐて、それに對し「消費を控へると經濟活動が停滯し、被災地にも惡い影響を及ぼす。むし…

「フラット課税で税収アップ」を嬉しがる人たち

「金融日記」の藤沢数希氏が「所得税はフラット10%にして大幅な税収アップ」といふ文章を「アゴラ」に寄せてゐる。フラット課税とは所得の多い少ないにかかはらず、同じ税率を適用する制度だ。現在、日本では所得が多くなるほど税率も高くなる累進課税を採…

【寄稿】金本位制と自由銀行業の役割について

市場経済(資本主義経済)はその本質において、決して弱肉強食的ではない。逆に互恵的であり、友愛や同情、人々の間の連帯感を育てる土壌であることを私は既に述べた。今回は市場経済が正常に発展するには、金本位制と自由銀行業の機能の復活がその必要条件…

『アイアムアヒーロー』と市民の武裝權

鈴木英雄、三十五歳。マンガ家として短期間ながら雜誌に連載を持つたこともあつたが、その後鳴かず飛ばずでアシスタントとして糊口をしのぐ。焦りと不安を感じながらも決まりきつた日常に流される日々だ。そんなある日、人々を原因不明の怖ろしい災厄が襲ひ…

【寄稿】タイガーマスクの伊達直人的行為の拡大について

プロレス漫画タイガーマスクの主人公伊達直人を名乗る人物が昨年のクリスマスに前橋市の児童相談所にランドセル10個を寄付したことがメディアによって全国へ伝えられた。これを契機に、全国の自動養護施設等で生活している恵まれない子供への匿名の人物から…

自由の實現

トム・パーマー(Tom G.Palmer)は米國の自由主義的シンクタンクとして知られるケイトー研究所(Cato Institute)で主任研究員を務め、アトラス經濟研究財團(Atlas Economic Research Foundation) でシンクタンクの世界的ネットワークを構築する仕事にも携…

『アメリカの大恐慌』を讀む(15)過少消費説

ロスバードの"America's Great Depression"(『アメリカの大恐慌』)を讀むこの試みは、理論篇である第一部を今囘で終へるのを機に、おしまひとする。大恐慌の經緯を具體的に追ふ第二部以降の内容は、今後、シリーズ「大恐慌の眞實」の中で紹介していきたい…

【寄稿】地方分権(decentralization)を越えて無政府主義(anarchism)の実現へ

近年地方分権についての議論が花盛りである。民主党の某幹部の説明では地方分権とは中央政府の保持する権力を地方自治体(地方政府)へ委譲することをいうらしい。しかし既に述べたように権力(right)の唯一の保持者は個人であるから、この委譲とは権力では…

『アメリカの大恐慌』を讀む(14)過剰生産説

ここからロスバードは、オーストリア理論以外のいくつかの景氣理論を俎上に載せ、批判を加へてゆく。過剩生産説(General Overproduction)不況が「過剩生産」によつて引き起こされるといふ解説は今でもよく聞かれる。だがこれは「まつたくのナンセンス」だ…

【寄稿】人間の権利(Man's Right)について

私はこれから木村貴さんの全面的な助力を得て、リバタリアンの立場から、拙文を時々発表させて頂く予定だが、今回は人間の権利とは何かというトピックスを取上げる。問題のポイントは、人間の権利は福祉優先主義(福祉国家の理念)と両立するか否かというこ…

遠くにありて

「西崎くん。17歳の時つきあってた子って、だれ?」 「……クラブのマネージャーやってた子」 「好きだった?」 「そりゃあ、その時はね」 「もどりたいわね、17歳の時に」 「そうかな、おれは今でいいや。人生やり直すのめんどくさい」 (私は、もどりたい。…

『アメリカの大恐慌』を讀む(13)賃金率と失業

賃金率と失業(Wage rates and unemployment)ケインズ派は、賃金率には「下方硬直性」がある、つまり下がりにくいと想定してゐる。America's Great Depression作者: Murray N. Rothbard出版社/メーカー: www.bnpublishing.com発売日: 2008/12/30メディア: …

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ハイパーインフレはあり得ないか――『日本が破綻しない10の根拠』を斬る(3)

最後はもう一度ハイパーインフレについてだ。 【07】年率1万3000%の物価上昇など、起こしたくても起こせない! 政府が大量のカネを刷る一方で、人々がそのカネを信用できなくなり、カネを受け取つたら即坐に店に走り、先を爭つて物と引き換へる(物を買ふ)…